幻のカレーを探しに
『幻の●●』とテレビでは軽々しくタイトルを掲げますが、特番程度で見つかるモノなど幻でも何でもありません。無いと分かっていても何年も探さずには居られず、それでいて手がかりは在れどそのモノは無し・・・そう難しくはない気がするのに作れず見つからず存在せず。故に幻なのだと私は思います。
かつて笹塚にカウンターだけのたった8席しかない小さなカレー屋さんがありました。愛想が良いわけでも無く、空いている訳でも無く、高級でも激安でも大盛りでも無い、ただただ美味しいカレー屋さんでした。店主の早すぎる死により、そのカレー屋さんは突如として幕を閉じます。その後多くの人か同じ味を求めますが、未だ近いモノさえ見つかっていません。ソース・ライス・サラダ・付け合わせと全要素が高い域にあり、味は当然の事・見た目・香り・分量に至るまで気の配られた逸品でした。
幡ヶ谷に店を開くウミネコカレーが幻に近い雰囲気を残しているとの噂を聞いて出掛けてきました。笹塚のお隣でそれなりに思い出も在るのですが、2010年以来訪れる事の無かった地です。注文したのはポークカレー。最近はもっぱら家でしか食べないので、外食の美味しいカレーは久々です。ポークのブロック・サニーレタスのサラダ・キャベツの付け合わせ。全体的にバランスが取れた一品でしたが、そこに幻を見る事はありませんでした。美味しいものを食べた後なのに寂しい気分になりつつ店を後に。少し申し訳ない気分になりつつ『幻はなかなかに手強い』と気持ちを盛り上げ、また歩き出します。